ARCHICAD
ArchicadでIFCに書き出す情報を整理する
2025.06.17
2025.06.17
こんにちは。
IU BIM STUDIOの原田です。
前回、IFCをExcelに書き出す方法を解説しました。前回は「全てのBIMデータ」を出力するように書き出しましたが、大量のデータが書き出されると確認するのも大変です。
今回はArchicadで必要な情報のみを書き出す方法を説明したいと思います。
今回はArchicadのサンプルモデルを使用します。
まず、サンプルモデルをそのままの状態でIFCに書き出したとき、プロパティがどのような状態かを確認します。
ゾーンには内部仕上が入力されています。
この状態で、IFC変換設定は「一般的なエクスポート」で書き出します。
書き出したIFCからゾーンの情報を見てみると、内部仕上が出力されていません。
プロパティの情報が出力されていなかったので、IFC変換設定でプロパティを出力するよう変更します。前回と同じ「全てのBIMデータ」を出力してみます。
「一般的なエクスポート」をコピーし、データ変換の欄を「全てのBIMデータ」に変更します。
作成したIFC変換設定で書き出したファイルを見てみると、内部仕上が出力されています。
先程と比べタブの数が増えています。これはプロパティセットというグループごとに分かれており、内部仕上以外も書き出されていることが分かります。
その他のプロパティも見て見ましょう。
AC_Equantity_ゾーン_仕上用というプロパティセットはこのようになっています。
しかし、よく見てみると巾木高さが内部仕上情報の値と違います。
AC_Pset_ゾーン_仕上用というプロパティセットを見てみます。
ここでも壁仕上が内部仕上情報の値と違っています。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
実は、これらはゾーンスタンプのパラメータです。
Archicadのゾーンにはラベルと似ているようで扱いの違うゾーンスタンプというオブジェクトが紐づいています。ゾーンスタンプには情報を入力できるようになっておりプロパティと機能が被る部分があります。そのため、同じ項目で違う値が出力されてしまったのです。
これはデータを扱ううえで情報の誤認、二重管理、データの信頼性の低下などにつながり、業務の効率化を妨げる可能性があります。
では、欲しい情報だけをどうやって出力したらよいでしょうか。
それでは、必要なプロパティを出力する方法を説明します。
今回はゾーンの内部仕上情報を出力します。
IFC変換設定で「一般的なエクスポート」をコピーし、プロパティマッピング欄の右のボタンを押します。
使用可能なプリセット欄で新規作成ボタンを押し、元の設定を複製します。
そして、新しく作った設定を選択し、「エクスポート用IFCプロパティをマッピング」ボタンを押します。
すると、上記のような画面が表示されます。
左側の列でIfcSpaceを選択し、中央下の「新規」ボタンを押します。
ダイアログが表示されるので、プロパティセット名、プロパティ名、プロパティタイプ、値タイプを入力します。仕上など文字列データはIfcLabelを使用します。
中央の欄にプロパティが作成されるので、壁仕上を選択し、右上の「ルールを作成」ボタンを押します
空のルールというものが作成されます。
次に内容を追加ボタンを押します。
プロパティ選択欄が出てくるので、壁仕上を選択します。
これでプロパティの出力設定の完了です。
その他のプロパティも作成します。
これで内部仕上のプロパティセットが作成できました。
天井高や幅木高さは長さとして管理するケースもあるかと思いますが、今回は元のプロパティが文字列型だったので文字列としました。
作成し終えたらOKボタンを押します。
IFC変換設定の最初の画面で作成したプリセットが選択されていることを確認してください。
それでは、作成したIFC変換設定でIFCファイルを書き出します。
内部仕上情報が出力されました。
ArchicadはIFCへの書き出し方をいろいろカスタマイズできる一方で、設定方法が少し分かりにくい部分があります。そうするとプロパティの整理を怠りがちになります。
昨今、AIやデータ分析などが重要視されています。chatGPTなどを使っている立場ではなかなか分かりませんが、データ分析などの作業の一番大変な部分はデータの整理だそうです。データ分析は前処理が8割なんて言葉もあるようです。
データを整理して管理をすることが、建築のデータ活用につながります。なんとなくモデルを作ったら、勝手に欲しい情報が手に入るわけではないのです。
必要な段階で必要なデータを過不足無く入力し、それをルール化してきちんと一元管理していくことが重要なのかと思います。
ただ、人間は不完全でなかなかルールを守れなかったり、忘れてしまったりします。
なので、IDSを使うなどしてルールが守れているかのチェックを簡単にするのがよいのだろうと思います。IDSはInformation Delivery Specificationの略でBuilding Smartが提唱するデータのフォーマットです。
顧客要求などの建物に必要な性能を決められたフォーマットに整理にすることによりIFCの情報を機械的にチェックすることができます。
このようなツールを活用することで、モデルを形状だけでないデータベースとして使い、データ品質を維持することができるのだろうと思います。ただ、従来の業務の仕方と全く違うので学習や試行錯誤が必要かなとも思います。
私もまだわかっていない部分も多いですが、業務効率化のためにいろいろ学んでいきたいと思います。
今回は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。